街が輝きに包まれる季節、ふと手元のジュエリーに目を落とすと、
そこに“永遠”の意味が宿っていることに気づく。
カルティエ「ラブブレス」は、その名の通り“愛”を語るために生まれたジュエリー。
1969年、ニューヨーク。
ファッションが「自由」と「個性」を語り始め、「個の愛」に共感が深まった時代のムードと共に
ジュエリーの意味を根底から変えた一本のブレスレットが誕生した。
#1
購入はカップル限定だったという噂も──
革新的だったユニセックスジュエリーの始まり

愛をかたちにしたこのブレスレットは、
当時としては革新的だった“ユニセックスジュエリー”の始まりでもある。
1960〜70年代ごろ、ジュエリーはまだ「女性のためのもの」という感覚が強かった。
ーカップルで着用し、同じデザインを男女で共有するー
そんなコンセプトを打ち出し、ジェンダーを超えたジュエリーの使用を広めたのが、
デザイナーのアルド・チプロと、このラブブレス。
贈るだけではなく、共に着け、共に時を刻むためのジュエリー。
華やかさよりも“約束”を意味するそのデザインが、
これまでのどんなジュエリーよりも深く、愛の本質を語っている。
#2
「ラブブレス」が変えた、ジュエリーと愛のかたち

「着け外しがすぐにできること」が当たり前だったこれまでのジュエリー。
しかしアルド・チプロは“愛をロックする”という発想から、
着脱には付属ドライバーが必要で、パートナーにつけてもらう前提という
前代未聞の仕組みをデザイン。
パートナーがネジを締めるという、ひとつの動作。
それは、ふたりだけの儀式。
贈られるジュエリーから共有するジュエリーへ。
"愛は持ち物ではなく、関係そのもの"
という新しいメッセージを世界に示したこのミニマルなブレスレットは
70年代のニューヨークに吹いた“個の愛”という風を象徴した。
#3
インダストリアルデザインの融合

曲線的で華やかな宝石を主役にしたデザインが主流だった当時のハイジュエリー。
そんな時代に、まったく異なるアプローチを示したアルド・チプロ。
ネジを模したモチーフ
ミニマルで構築的な佇まいの、フラットなバンド型
彼はあえて工業製品を思わせるエレメントを取り入れ、
ジュエリーの概念そのものを更新。
それは、当時のジュエリー界では異例といえる“インダストリアルデザイン”の美学。
ファッションの自由を象徴する1970年代の空気と共鳴したラブブレスは、
ミニマルでユニセックスに使えるアイコンジュエリーとして定着。
後の “ジェンダーレスジュエリー” の潮流を先取りした存在として語られている。
#4
現代に続く“永遠のアイコン”としての存在


半世紀を経た今も、ラブブレスのデザインはほとんど変わっていない。
完成されたその形が、時代を超えて人の心に響き続けている証。
ゴールドの輝きも、ネジのフォルムも、
“愛”という言葉の意味が広がった現代では、より自由な象徴となった。
恋人のためだけでなく、
大切な友人へ、家族へ、あるいは“自分自身への贈り物”として。
それぞれの人生に寄り添うための一本として選ばれている。
誰かとの絆を確かめるためにも、
自分の物語を静かに記録するためにも、
ラブブレスは今も変わらず、手元で永遠を語り続けている。
ーーー
半世紀を超えた今も、人を惹きつけ続けるラブブレス。
恋人の証としても、自分自身への贈り物としても、
その一本は手首に触れた瞬間から“個の物語”を語り始める。
ミニマルで揺るがない輝きは、
これからの時間さえ静かに刻んでいく。
冬の光を受けて静かに輝くその輪の中に、
あなたはどんな未来を託すのだろう。